ヤマト科学賞選考委員会は、このたび「第4回ヤマト科学賞」の受賞者を決定致しました。
本賞は、ヤマト科学創業125周年を記念してライフサイエンス、マテリアルサイエンス、インフォメーションサイエンス及びそれらの融合分野を中心に、独創性、創造性に富む、気鋭の研究者を顕彰し、人類に夢と希望をもたらす科学技術の次世代リーダーとしての活躍を支援することを目的として2013年9月に設立され、2014年3月に「第1回ヤマト科学賞」を発表致しました。
「第4回ヤマト科学賞」は昨年8月から11月末までの4ヵ月間に多数のご応募をいただき、ヤマト科学賞選考委員会にて厳正かつ公正な審査を行いました。その結果、糖尿病、糖尿病腎症などの生活習慣病の発症の解明において、リーダー的な存在として大きな業績をあげた理化学研究所 統合生命医科学研究センター 堀越桃子(ほりこし ももこ)氏を受賞者に決定し、ヤマト科学の創業記念日である3月3日に東京大学 山上会館にて記者会見を行い発表致しました。
授賞式は本年4月18日(火)ヤマト科学株式会社本社にて、受賞記念講演は別途11月に執り行います。
委員長 | ヤマト科学株式会社 代表取締役社長 文部科学省 科学技術・学術審議会 専門委員 |
森川 智 |
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委員 | 東京大学 アイソトープ総合センター長 東京大学 先端科学技術研究センター 教授 |
児玉 龍彦 |
委員 | 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 理事長 東京大学 教授 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 議員 |
橋本 和仁 |
委員 | 東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 東京大学 先端科学技術研究センター 教授 |
廣瀬 通孝 |
記者会見の様子
堀越 桃子 (ほりこし ももこ)氏
理化学研究所 統合生命医科学研究センター
代謝・内分泌・腎疾患チーム チームリーダー
我が国においても糖尿病などのいわゆる生活習慣病の増加が深刻な問題となっている。一方、糖尿病腎症は透析導入原疾患の第一位であり、年間1万人以上の患者が糖尿病性腎症により透析導入されている。糖尿病、糖尿病腎症などの発症には遺伝因子の関与が重要とされており、その解明により個別の治療あるいは予防を講じる事が可能となると考えられている。堀越桃子氏は、糖尿病・代謝疾患の発症や治療効果、予後など、臨床的に重要な指標に関連するゲノム情報を得て、得られた成果を臨床にフィードバックすることを目標に、千葉大から東大、オックスフォードで研究を行なってきた。本年、英国オックスフォード大学ウェルカムトラストセンターにおいて、世界の140名をこえる研究者をまとめて、出生児の体重を決める遺伝的差異が、成人病の発症に関わることを証明した。
多年にわたる研究成果は、誕生時の体重と成人病の関与についてNature誌に論文発表された。ここで注目されるのは、我が国から単身参加した若手女性研究者が、世界の153,781名を対象とした147名の研究者、団体の共同研究を筆頭著者としてまとめた業績である。誕生時の体重に関わる60遺伝子座を同定し、誕生時の体重が、成人期の収縮期高血圧、2型糖尿病、冠動脈疾患の発症と逆相関することを発見した。これらの遺伝子群にコードされたタンパク質は、インスリンのシグナル、糖代謝、グリコーゲンの合成、そしてクロマチン(遺伝子の高次構造)の再構成にかかわっているものが多く、また同時に、インプリンティング(エピゲノム修飾)も体重に関わっていた。この研究は、人間の出生時の体重に関わる遺伝子を同定し、これらが生涯にわたって生活習慣病の発症に関わることを示した。
若手の筆頭的な研究者であるとともに、国際的なリーダーであるという点からこれからの活躍が大いに期待される。
1992年 | お茶の水女子大学附属高等学校 卒業 |
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1998年 | 千葉大学医学部医学科 卒業 |
2005年 | 東京大学大学院医学系研究科 内科学専攻 医学博士課程修了 |
1998年 - 1999年 | 東京大学医学部附属病院 内科研修医 |
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1999年 - 2000年 | 社会保険中央総合病院 内科研修医 |
2000年 - 2001年 | 済生会中央病院 内科専修医 |
2001年 - 2002年 | 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科 上級レジデント |
2005年 - 2007年 | 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科 リサーチレジデント |
2007年 - 2010年 | 東京大学医学部附属病院糖尿病・代謝内科 助教 |
2010年 - 2016年 | 英国オックスフォード大学ウェルカムトラスト人類遺伝学センター 及び糖尿病・内分泌・代謝センター (Mark I. McCarthy Lab) 博士研究員 |
2016年 - 現在 | 理化学研究所 統合生命医科学研究センター 代謝・内分泌・腎疾患チーム チームリーダー |
2003年 | 認定内科医 資格取得 |
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2005年 | 糖尿病専門医 資格取得 |
2010年 | 鈴木万平糖尿病財団より、海外留学フェローシップ |
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※受賞者、ヤマト科学賞選考委員会の所属及び肩書は2017年3月時点のものです。