ヤマト科学賞選考委員会は、このたび「第10回ヤマト科学賞」の受賞者を決定致しました。
本賞は、ヤマト科学創業125周年を記念してライフサイエンス、マテリアルサイエンス、インフォメーションサイエンス及びそれらの融合分野を中心に、独創性、創造性に富む、気鋭の研究者を顕彰し、人類に夢と希望をもたらす科学技術の次世代リーダーとしての活躍を支援することを目的として2013年9月に設立され2014年3月に「第1回ヤマト科学賞」を発表致しました。
「第10回ヤマト科学賞」は昨年8月から11月末までの4ヵ月間に多数のご応募をいただき、ヤマト科学賞選考委員会にて厳正かつ公正な審査を行いました。その結果、サステナブルな人類社会のための合成生物学の可能性を大きく広げる技術革新を自らの力で切り開いてきただけでなく、国際的なリーダーシップをもって多くのプロジェクトを主導してきた若手の日本人研究者である Head of DNA Synthesis Science Program, The US Department of Energy Joint Genome Institute, Lawrence Berkeley National Laboratory 吉国 靖雄(よしくに やすお)氏を受賞者に決定致しました。
委員長 | ヤマト科学株式会社 代表取締役社長 | 森川 智 |
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委員 | 東京大学 先端科学技術研究センター がん・代謝プロジェクトリーダー |
児玉 龍彦 |
委員 | 国立研究開発法人 科学技術振興機構 理事長 | 橋本 和仁 |
委員 | 東京大学 先端科学技術研究センター サービスVRプロジェクトリーダー 東京大学名誉教授 |
廣瀬 通孝 |
記者会見はヤマト科学本社にて開催いたしました。
吉国 靖雄(よしくに やすお)氏
Head of DNA Synthesis Science Program, The US Department of Energy Joint Genome Institute,
Lawrence Berkeley National Laboratory
Staff Scientist, Environmental Genomics and Systems Biology Division & Biological and Systems Engineering Division, Lawrence Berkeley National Laboratory
北海道大学大学院農学研究院・客員准教授
東京農工大学グローバルイノベーション研究院・准教授(兼任)
受賞テーマ 「非モデル化微生物に対するゲノムエンジニアリング技術開発と応用」
1997年 | 神奈川県立氷取沢高等学校 卒業 |
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2001年 | 東京理科大学 基礎工学部 生物工学科 卒業 |
2007年 | PhD, Department of Bioengineering, University of California Berkeley (UCSF&UCB Joint Graduate Program in Bioengineering) |
2001年 - 2002年 | Research Associate, Department of Chemical Engineering, University of California, Berkeley |
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2007年 - 2008年 | Jane Coffin Childs Memorial Fund and Howard Hughes Medical Institute, Department of Biochemistry, University of Washington |
2008年 - 2014年 | Co-founder and Chief Science Officer, Bio Architecture Lab, Inc. |
2014年 - 現在 | Head of DNA Synthesis Science Program, The US Department of Energy Joint Genome Institute, Lawrence Berkeley National Laboratory |
2018年 - 現在 | 北海道大学大学院農学研究院・客員准教授 |
2019年 - 現在 | 東京農工大学グローバルイノベーション研究院・准教授(兼任) |
1997年 | 小玉記念科学賞 |
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2006年 | 米国産業微生物学会(SIMB)Best Student Abstract Award |
2007年 | Jane Coffin Childs Memorial Fund and Howard Hughes Medical Institute Joint Fellowship |
2012年 | Sustainable Biofuels Award (BAL) |
2013年 | 米国産業微生物学会(SIMB)Young Investigator Award |
2019年 | R&D100 Award Finalist |
合成生物学はバイオ燃料に代表されるエネルギーの生成、再生可能な化学物質の製造、農作物の安定的増収などサステナブルな人類社会の維持と発展に極めて重要な技術領域であり、その潜在的可能性は地球環境に存在する微生物のゲノムシーケンスの網羅的解読によって大きく広がったもののその情報を合成生物学として活用する安定した技術基盤は確立されていなかった。
吉国靖雄博士は、東京理科大学を卒業後、カリフォルニア大学バークレー校でバイオエンジニアリングを専攻して博士号を取得、可塑性アミノ酸の分子進化による酵素活性の進化の証明に成功し(2006年Nature 筆頭著者)、さらに褐色藻類からのバイオ燃料を微生物合成するプラットフォームの研究(2012年Science 最終著者)を経て、2015年より合成生物学において世界最大の拠点の一つである米国Department of Energy Joint Genome Institute (DOE JGI)においてDNA合成サイエンスプログラムのプログラム長として100以上の合成生物学のプロジェクトを主導してきた。 吉国博士の特筆すべき成果として、従来合成生物学で扱われてきた酵母や大腸菌など以外の非モデル化微生物に対してその生合成パスウェイ領域のゲノムエンジニアリングを行う技術を開発したことである(Nature Microbiology 2019, Cell Chemical Biology 2022)。これにより生物界に存在する培養が不可能なものを含む極めて多くの微生物に対してその生合成経路を利用できる可能性が開け、合成生物学の応用領域が大きく広がった。またクリーンテクノロジー企業であるBio Architecture Lab, Inc.の最高科学責任者として、出芽酵母株の糖異化経路のエンジニアリングにより大型褐藻類の糖類から高効率なバイオエタノールの生産に成功している(Nature 2014)。
サステナブルな人類社会のための合成生物学の可能性を大きく広げる技術革新を自らの力で切り開いてきただけでなく、国際的なリーダーシップをもって多くのプロジェクトを主導してきた若手の日本人研究者としてヤマト科学賞にふさわしい成果と考え、吉国靖雄氏に第10回ヤマト科学賞を授与する。
※受賞者、ヤマト科学賞選考委員会の所属、肩書は2023年3月2日時点のものです。