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ヤマト科学賞

第5回ヤマト科学賞受賞者の決定について

ヤマト科学賞選考委員会は、このたび「第5回ヤマト科学賞」の受賞者を決定致しました。

本賞は、ヤマト科学創業125周年を記念してライフサイエンス、マテリアルサイエンス、インフォメーションサイエンス及びそれらの融合分野を中心に、独創性、創造性に富む、気鋭の研究者を顕彰し、人類に夢と希望をもたらす科学技術の次世代リーダーとしての活躍を支援することを目的として2013年9月に設立され2014年3月に「第1回ヤマト科学賞」を発表致しました。

「第5回ヤマト科学賞」は昨年8月から11月末までの4ヵ月間に多数のご応募をいただき、ヤマト科学賞選考委員会にて厳正かつ公正な審査を行いました。その結果、統計物理学の成果と(量子)情報理論を融合させることにより、統計物理学の新しい潮流を切り拓いた 東京大学大学院 工学系研究科 准教授 沙川 貴大(さがわ たかひろ)氏を受賞者に決定致しました。

授賞式は本年4月17日(火)ヤマト科学株式会社本社にて、受賞記念講演は別途11月に執り行います。

委員長 ヤマト科学株式会社 代表取締役社長
文部科学省 科学技術・学術審議会 専門委員
森川 智
委員 東京大学 アイソトープ総合センター長
東京大学 先端科学技術研究センター 教授
児玉 龍彦
委員 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 理事長
東京大学 教授
内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 議員
橋本 和仁
委員 東京大学 大学院 情報理工学系研究科 教授
東京大学 先端科学技術研究センター 教授
廣瀬 通孝

記者会見の様子

受賞者紹介


沙川 貴大(さがわ たかひろ)氏
東京大学大学院 工学系研究科 准教授

受賞理由

沙川貴大氏は熱力学の基本原理を、理論物理学の立場から研究してきた。とくに2008年ごろから、熱力学と情報理論を融合させて、いわば情報熱力学と呼ぶべき新しい理論体系を構築した。

物理学者マクスウェルは19世紀に、原子や分子を直接観測して制御することができる「デーモン」が存在すれば、熱力学第二法則が破れるのではないかと考えた。これは「マクスウェルのデーモンのパラドックス」として知られ、熱力学第二法則の基礎に関わる問題として多くの物理学者によって研究されてきた。沙川氏は統計物理学の成果と(量子)情報理論を融合させることにより、熱力学第二法則を「情報」を含んだ形に拡張することに成功した(PRL, 2008, 2009, 2010, 2012, 2013など)。これによって、マクスウェルのデーモンがなぜ第二法則と矛盾しないかの一般的な説明を与え、19世紀以来のパラドックスを解決に導いたと言える。また沙川氏の理論によって、情報処理プロセスに必要なエネルギーコストの原理的な下限が明らかになり、この理論は基礎物理として意義だけでなく将来的な工学的応用の観点からも期待される。

他方、沙川氏の理論は実験家との共同研究によって検証されており、その実験には世界で初めての「マクスウェルのデーモン」の実験的実現という意義もある(Nature Physics, 2010)。この数年、同種の実験は様々な系で世界的に行われており、その端緒となったのが沙川氏らの実験であると言える。さらに沙川氏は最近になって、量子力学から直接的に熱力学第二法則を導出することに成功するなど(PRL, 2017)、熱力学第二法則の基礎にまつわる研究の幅を広げている。

以上の研究が国際的に高く評価されていることは、沙川氏が国内外の多くの賞を受賞していることからも明らかである。たとえば3年に一度開催される統計物理学の最大の国際会議Statphysで、毎回1~2名が選出されるYoung Scientist Prize (通称Young Boltzmann Medal)を2013年に受賞している。また、理論物理学の国内で最も権威ある賞の一つである西宮湯川記念賞を2015年に、トムソン・ロイター(現クラリベイト・アナリティクス)のリサーチフロントアワードを2016年に受賞している。

沙川氏は、その研究業績により世界的に大きな存在感を示しており、19世紀以来の重要な問題に新しい光を当て、統計物理学の新しい潮流を切り拓いたと言える。

 

学歴

2002年 灘高等学校 卒業
2006年 京都大学 理学部 卒業
2008年 東京工業大学大学院 理工学研究科 物性物理学専攻 修士課程修了
2011年 東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻 博士課程修了(理学博士)

職歴

2011年 - 2012年 京都大学 白眉センター 特定助教
2013年 - 2015年 東京大学大学院 総合文化研究科 広域科学専攻 相関基礎科学系 准教授
2015年 - 現在 東京大学大学院 工学系研究科 物理工学専攻 准教授

受賞

2011年 平成22年度 東京大学大学院 理学系研究科研究奨励賞
2011年 日本物理学会 第5回領域11若手奨励賞
2013年 Young Scientist Prize of the C3 Commission (Statistical Physics) of IUPAP
("Young Boltzmann Medal")
2015年 第30回 西宮湯川記念賞
2016年 新学術領域研究「ゆらぎと構造の協奏」領域賞
2016年 第4回リサーチフロントアワード
(トムソン・ロイター 現クラリベイト・アナリティクス)

※受賞者、ヤマト科学賞選考委員会の所属及び肩書は2018年3月時点のものです。