ヤマト科学賞選考委員会は、このたび「第2回ヤマト科学賞」の受賞者を決定致しました。
今本賞は、2013年9月にヤマト科学創立125周年を記念してライフサイエンス、マテリアルサイエンス、インフォメーションサイエンス及びそれらの融合分野を中心に、独創性、創造性に富む、気鋭の研究者を顕彰し、人類に夢と希望をもたらす科学技術の次世代リーダーとしての活躍を支援することを目的として設立したものです。
昨年11月末までの締切り迄に多数の応募をいただき、選考委員会にて厳正かつ公正な審査を行った結果、ゲノム病理学というライフサイエンスとインフォメーションサイエンスを融合させた新たな学問分野を提唱され、難治疾患の研究で大きな発見と多大な功績を挙げられている東京医科歯科大学 の石川俊平氏を受賞者に決定致しました。
受賞記念講演ならびに授賞式は、本年5月28日(木)六本木アカデミーヒルズにて執り行います。
委員長 | ヤマト科学株式会社 代表取締役社長 文部科学省 科学技術・学術審議会 専門委員 |
森川 智 |
---|---|---|
委員 | 東京大学 アイソトープ総合センター長 東京大学 先端科学技術研究センター 教授 |
児玉 龍彦 |
委員 | 国立研究開発法人 物質・材料研究機構 理事長 東京大学 教授 内閣府 総合科学技術・イノベーション会議 議員 |
橋本 和仁 |
委員 | 東京大学大学院 情報理工学系研究科 教授 東京大学 先端科学技術研究センター 教授 |
廣瀬 通孝 |
記者会見の様子
石川 俊平(いしかわ しゅんぺい)氏
東京医科歯科大学 教授
1975年11月26日生まれ(39歳)
21世紀は、ヒトゲノム解読で幕を開け、生命科学は生物の情報の全体像をとらえ始めるとともに、膨大な情報とウェットで複雑な生物の実態を結びつける新たな展開を求めています。
石川俊平氏は、ヒトゲノムの解読された2000年に東京大学医学部医学科を卒業後、人体病理学教室(深山正久教授)で病理学、先端科学技術研究センター(油谷浩幸教授)でゲノム科学に取り組み、2004年に医学博士号を取得して、病理学という肉眼的・組織学的な形態学とゲノム科学との研究における統合的取り組みを進めてきました。
ヒトゲノム情報を用いて、2万以上の遺伝子の挙動がマイクロアレイを用いて解析可能となり、石川氏はがんのゲノミクス解析に取り組みました。その情報処理に取り組む中で、マイクロアレイによりゲノムDNAのコピー数を定量化できる可能性に着目してウェット実験での検証を進め、ゲノムスケールでDNAコピー数を正確に計測する手法を開発しました。この過程で健常人のゲノムでも遺伝子コピー数の違い(コピー数多型)が高頻度に存在することを見い出し、世界中のゲノム研究機関と共同でヒトゲノムコピー数多型の概要地図を作成しました。この論文は石川氏を共同筆頭著者としてNature 誌に2006年に発表されました。昨年末までに被引用数3079を数え、ヒトゲノム研究における重要なマイルストーンとなる業績となっています。
これらの研究を背景に石川氏は2013年37歳時に、東京医科歯科大学難治疾患研究所の教授に選任され、ゲノム病理学という新たな学問分野を提唱して注目を集めています。並列型次世代シーケンサーを用いたゲノム解析に病理学的知見を併せて、がんを始めとする難治疾患の研究を推進しています。
2014年には治療の難しいスキルス胃がんのゲノム解析によりRhoAの変異がドライバー遺伝子変異として重要であることを同定し、Nature Geneticsに発表しました。再発・転移をともなう進行がんの治療は、現代の医学の最大の課題であり、石川氏がゲノム病理学という新領域をさらに発展させ、分子標的の同定と、画期的な治療法の開発に進むことを期待して、第2回ヤマト科学賞を贈呈します。
2000年3月 | 東京大学医学部医学科卒業 |
---|---|
2004年3月 | 東京大学大学院医学系研究科博士課程(人体病理学・病理診断学専攻分野)修了 |
2004年4月 | 東京大学先端科学技術研究センター(ゲノムサイエンス部門) 特任助手 |
---|---|
2007年4月 | 東京大学大学院医学系研究科(人体病理学・病理診断学専攻分野) 助手(のち助教) |
2010年3月 | 東京大学大学院医学系研究科(人体病理学・病理診断学専攻分野) 准教授 |
2013年1月 | 東京医科歯科大学難治疾患研究所(ゲノム病理学分野) 教授 |
※受賞者、ヤマト科学賞選考委員会の所属及び肩書は2015年3月時点のものです。