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ヤマト科学賞

2026年03月06日 第13回ヤマト科学賞受賞者の決定について


≫ 第13回ヤマト科学賞 受賞者


加藤 淳(かとう じゅん)
国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員
1986年3月生まれ(39歳)

【受賞タイトル】

「デジタルコンテンツ分野における先導的HCI研究」

【受賞理由】

 加藤淳氏は、人々の創造的活動を支えるソフトウェアツール開発による介入的アプローチでヒューマン・コンピュータ・インタラクション(HCI)の研究を行っている新進気鋭の研究者である。この分野の研究者数は多いが、加藤氏の特徴は音楽やアニメなどの創作文化の現場に身を置き、高度な技術的課題を突破すると共に、現場の創造性を支援するインタラクション設計に成功してきた点にある。
 
 我が国の産業界に目を転じると、この数年のうちにアニメやゲームを中心とするデジタルコンテンツ分野の伸長が著しい。かつてはサブカルチャーなどと言われてきたこの分野であるが、数年前に輸出額においては鉄鋼業を抜き、昨年は半導体産業を上回るに至っている。しかるに、この分野に対応するアカデミアの整備は遅れており、今後の更なる産業構造の改革を考えると、はなはだ心もとない状況であると言わざるを得ない。こうした状況において、加藤氏の存在は際立っており、稀有な存在というほかはない。

 今後の科学技術には、単なる効率化や自動化のレベルを超え、人々の営みや文化を支え、未来への想像力を育むという役割が求められてくるはずである。HCI分野はその中心的存在ではあるが、従来研究は、誰もが・速く・簡単に、を実現する観点が重視され、文化的背景まで踏み込んだ技術開発は十分とは言えなかった。
 
 加藤氏は、プログラミング言語分野で培われてきた基盤技術をツール設計へ積極的に応用することで、コンテンツ制作時のプログラマ・デザイナ間連携を容易にしたり、インタラクティブな歌詞駆動視覚表現「リリックアプリ」を世界に先駆けて提唱・実現したりしてきた。また同氏は、日本の商業アニメ制作で70年以上使われ続けてきた「絵コンテ」様式を丹念な現場取材で読み解き、絵コンテ制作ツールを題材に一般性の高い知見を導出したり、プロ仕様の効率を追求したユーザインタフェース設計を実現してきた。

 加藤氏は、こうした学術的成果が国際的に認められHCI分野におけるトップカンファレンスであるACM CHIにて繰り返し受賞しており、国内でも科学技術への顕著な貢献が認められ「ナイスステップな研究者2024」に選出されるなど、この分野の気鋭の研究者として高い評価を受けてきた。さらに、研究成果は多くのクリエータに実用されており、社会実装まで高い水準で両立させている点は特筆に値する。

 以上、インフォメーションサイエンスのHCI分野で顕著な業績を継続的に上げつつ、デジタルコンテンツ分野のダイナミックな時代的変化に立ち会いつつある加藤氏は、人類に夢と希望をもたらす科学技術の次世代リーダーとしての活躍を支援することを目的とした、ヤマト科学賞の受賞者としてふさわしい人物である。以上の理由により、第13回ヤマト科学賞を授与する。

【受賞者経歴】
(学歴)

2009年 東京大学 理学部 情報科学科 卒業
2011年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 修士課程修了
2014年 東京大学 大学院情報理工学系研究科 コンピュータ科学専攻 博士課程修了・博士(情報理工学)取得

(職歴)

2011年3月-2014年3月 日本学術振興会 特別研究員(DC1)
2014年4月-2018年8月 国立研究開発法人産業技術総合研究所 研究員
2018年7月-現在 アーチ株式会社 技術顧問(兼務)
2018年9月-現在 国立研究開発法人産業技術総合研究所 主任研究員
2024年4月-2025年3月 パリ=サクレ大学 Visiting Scientist

(受賞)※抜粋

2013年 CHI '13 Honorable Mention Award(Association for Computing Machinery)
2014年 音楽情報科学研究会(SIGMUS)ベストプレゼンテーション賞(情報処理学会)
2014年 HAI '14 Best Paper Nominee(Association for Computing Machinery)
2014年 WISS 2014 最優秀論文賞(日本ソフトウェア科学会)
2015年 CHI '15 Honorable Mention Award(Association for Computing Machinery)
2021年 IPSJ/ACM Award for Early Career Contributions to Global Research(情報処理学会)
2023年 優秀若手研究者賞(Japan ACM SIGCHI Chapter)
2023年 CHI '23 Honorable Mention Award(Association for Computing Machinery)
2023年 音楽情報科学研究会(SIGMUS)ベストプレゼンテーション賞(情報処理学会)
2024年 インタラクション2024 最優秀論文賞・インタラクティブ発表賞(一般投票)(情報処理学会)
2024年 2024年度 山下記念研究賞(SIGHCI推薦・SIGMUS推薦)(情報処理学会)
2024年 科学技術への顕著な貢献2024(ナイスステップな研究者)(文部科学省 科学技術・学術政策研究所)
2025年 情報処理学会 2024年度 特選論文(情報処理学会)
2025年 第40回 電気通信普及財団賞(テレコム学際研究賞 奨励賞)(電気通信普及財団)

 

※受賞者、ヤマト科学賞選考委員会の所属、肩書は2026年3月5日時点のものです。