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ヤマト科学賞

2026年03月06日 第13回ヤマト科学賞受賞者の決定について


≫ 第13回ヤマト科学賞 受賞者


武田 俊太郎(たけだ しゅんたろう)
東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 准教授
1987年8月生まれ(38歳)

【受賞タイトル】

「ループ型光量子コンピュータ方式の提案と先導的実証研究」

【受賞理由】

 武田俊太郎氏は、独自に提案した革新的な方法論により、光量子コンピュータ実現への新たな道を切り拓いてきた研究者である。その成果は、光量子情報処理分野全体に大きな波及効果をもたらし、国内外から極めて高い注目と評価を受けている。

 近年、量子コンピュータの研究開発競争は世界的に激化しており、超伝導回路、イオン捕捉方式など、多様なアプローチがしのぎを削っている。その中で光量子コンピュータは、常温・常圧で動作可能であること、高いクロック周波数を実現できること、さらには量子ネットワークとの高い親和性を有することなど、他方式にはない顕著な利点を備えた有望な方式である。従来は研究者人口の少ないニッチな分野であったが、近年急速に発展し、国際的な注目を集めるに至っている。日本は、長年にわたり蓄積してきた高度な光学技術に加え、5G・6G時代の光通信を支える最先端技術基盤を有しており、量子光学分野においても独自の強みを持つ。この点において、光量子コンピュータは我が国が国際競争力を発揮し得る重要な研究領域である。

 武田氏は、東京大学大学院生時代より指導教員である古澤明教授のもとで光量子コンピュータ研究に従事し、新たな量子情報処理の可能性を切り拓いてきた。とりわけ、大規模な量子計算をコンパクトな光回路で実現する「ループ型光量子コンピュータ」の概念を提案するなど、研究室の中核として先導的役割を果たしてきた。2019年に独立した研究室を立ち上げて以降は、その心臓部となる演算回路の実装に成功し、3量子ビット相当の光量子コンピュータのプロトタイプマシンを完成させている。さらに最近では、量子性の強い光パルスを組み込むことにより、「スパコン超え」に必要とされる演算を可能とする新たなプラットフォームを世界に先駆けて確立した。これは、従来の光量子コンピュータ方式では未踏であった最先端領域に、武田氏の方式がいち早く到達したことを示す画期的成果である。

 加えて武田氏は、これらの基盤技術をさらに発展させ、光量子技術の近未来での実用化を見据えた新たな量子アプリケーションの探索や、汎用的な量子光源の開発にも積極的に取り組んでいる。これらの研究は、光量子技術全般の社会実装を加速させるうえで極めて重要な貢献を果たしている。

 以上の成果は、テレビや新聞をはじめとする多数のメディアで広く報道されており、国内外から多くの招待講演の依頼を受けるなど、国際的にも高い評価を確立している。武田俊太郎氏の研究は、日本発の高い独創性を有するアイデアと技術によって光量子情報処理技術の実用化を大きく前進させ、将来社会に革新的なイノベーションをもたらすことが強く期待される。以上の理由により、武田俊太郎氏に第13回ヤマト科学賞を授与する。
 

【受賞者経歴】
(学歴)

2010年 東京大学 工学部物理工学科 卒業
2012年 東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 修士課程修了
2014年 東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 博士課程修了

(職歴)

2014年4月-2016年5月 分子科学研究所 光分子科学研究領域 特任助教
2016年6月-2017年3月 分子科学研究所 光分子科学研究領域 助教
2017年4月-2019年3月 東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 助教
2019年4月-2019年9月 東京大学 大学院工学系研究科 総合研究機構 特任講師
2019年10月-現在 東京大学 大学院工学系研究科 物理工学専攻 准教授

(受賞)

2010年 東京大学 総長賞/工学部長賞(学修最優秀)/物理工学科優秀卒業論文賞
2012年 東京大学 工学系研究科長賞/田中昭二賞(物理工学優秀修士論文賞)
2014年 東京大学大学院 工学系研究科長賞(研究特別賞)
2016年 井上科学振興財団 井上研究奨励賞
2016年 日本物理学会 若手奨励賞(領域1)
2019年 安藤研究所 安藤博記念学術奨励賞
2019年 東京大学大学院工学系研究科 克研究奨励賞(若手研究者部門)
2020年 文部科学大臣表彰 若手研究者賞
2021年 船井情報科学振興財団 船井学術賞
2021年 MITテクノロジーレビュー[日本版]Innovators Under 35 Japan 2021
2023年 東京大学大学院 工学系研究科長表彰
2023年 丸文財団 丸文学術賞


※受賞者の所属、肩書および年齢は2026年3月5日時点のものです。