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Q&A

HPLC(High Performance Liquid Chromatography)とは?

更新日:2024年04月11日

HPLCとは?

High Performance Liquid Chromatographyを指します。送液ポンプ、インジェクター(オートサンプラー)、カラムオーブン、検出器などで構成されます。サンプルを成分ごとに分離する技術で、どんなものが(定性)、どのくらい入っているか(定量)確認することが出来、分離した成分を回収(分取クロマトグラフィー)することも出来ます。


ポンプ

サンプルをオートサンプラーで注入して、カラムで分離し検出器で検出するためには、移動相を流すポンプが必要になります。ポンプには下記の通り3種類のポンプがあります。

アイソクラティックポンプ
移動相の組成を一定に保ったまま使用します。GPC分析の際に用いられ送液ポンプの数は1台です。

低圧グラジエントポンプ
送液ポンプの前に電磁弁等を設け複数の移動相を混合します。送液ポンプの手前で移動相を混合しているため(混合時にポンプの圧力が掛かっていないという意味で)、低圧グラジエントポンプと呼びます。送液ポンプ1台でグラジエントが可能です。導入時の初期コストが抑えられ、送液ポンプが1台なのでランニングコストも抑えられます。

高圧グラジエントポンプ
混合させる移動相の数ごとに送液ポンプが必要で2液のグラジエントの場合は2台、4液のグラジエントの場合は4台のポンプが必要になります。各移動相の濃度比率に応じて流量を調整して送液後に混合します。送液後に移動相を混合しているため(混合時にポンプの圧力が掛かっているという意味で)、高圧グラジエントポンプと呼びます。グラジエントの遅れが少なくなります。ポンプが複数台必要なので導入時のコストが高くなります。
 

  低圧グラジエント

     高圧グラジエント


検出器

分離した成分を検出するモジュールです。サンプルの種類により検出器を使い分けます。例えば、UV吸収があるサンプルであればUV-VIS検出器やPDA検出器で検出が可能です。検出器の種類として下記のようなものがあります。

UV-VIS検出器
紫外から可視域の吸収波長を持つサンプルを1波長の吸光度で検出します。芳香環や二重結合を有する有機化合物の検出に用いられます。

PDA検出器
紫外から可視域の吸収波長を持つサンプルを多波長の吸光度で検出します。UV-VIS検出器は設定した1波長(或いは2波長)の測定に限定されるのに対し、PDA検出器はある一定範囲のクロマトグラムを同時に測定することが出来るため時間、強度、波長の3次元データが取得できます。分析条件を検討する際には有効な検出器です。

RI検出器
屈折率を検出します。糖、アルコールなどほぼすべてのサンプルが検出可能ですが、感度が低いのが欠点です。GPC分析に多く用いられます。グラジエント分析は不可でアイソクラティック分析を用います。

蛍光検出器
励起波長の光を吸収して発光する光(蛍光)を検出します。蛍光を発しないサンプルは誘導体化することで検出が可能です。UV-VIS検出器よりも50~200倍ほど高感度に分析出来ます。アミノ酸やビタミンやステロイドなどの分析に用いられます。

NQAD検出器
移動相をネブライジングさせ、残ったエアロゾル状態の微粒子に水分を凝縮させ、レーザで検出します。不揮発性・半揮発性物質を検出する事が可能です。グラジエント分析が可能で高感度で検出する事が出来ます。

日立 5430ダイオードアレイ検出器

日立 5440蛍光検出器


HPLCの検出器には上記の他に、質量分析計があります。質量分析は分子をイオン化し、そのm/zを測定することによって分子の質量を測定できる装置です。略語としてMSと記載しマスと読むことがありますが、日本質量分析学会ではエムエスの呼び方を推奨しています。質量分析計で代表的な物として下記のようなものがあります。

四重極型質量分析計
質量電荷比のイオンを分離して質量を分析します。4本のロッドを平行に束ねて構成されており、四重極とも呼ばれます。対向するロッドには同じ電位を与え、隣り合うロッドには逆の電位を与えます。また、ロッドには直流と高周波の交流を流します。4本のロッドの電圧の調整をしてイオンを送りこむと、ある一定の範囲の質量電荷比のイオンだけ、安定して通り抜ける事が出来ます。このように四重極型質量分析計は特定のイオンだけを取り出す事で(SIM)高感度に定量することが可能です。また直流と高周波の交流電圧を連続的に変化させスキャン分析マススペクトルを得る事も可能です。

トリプル四重極型質量分析計
四重極型質量分析計と比較して、より高感度に定量出来る質量分析計です。2つの四重極が衝突室(コリジョンセル)を挟んで直列に連結したものです。トリプル四重極型質量分析計は、プリカーサイオンをコリジョンセルで壊しプロダクトイオンを選択してMRMデータを取得する事で、より高感度な結果が得られます。衝突室(コリジョンセル)内のイオンガイドとして四重極が用いられたことから、トリプル四重極と呼ばれています。現在「トリプル四重極」は装置構成を厳密に表現している用語ではないため、より広義な用語としてタンデム質量分析計という言い方もあります。

飛行時間型質量分析計
イオンの飛行時間で定性出来る質量分析計です。イオンが一定の高エネルギーでフライトチューブ内を加速し、検出器に到達するまでの時間を計測します。質量数の小さいものは速く、質量数の大きいものは遅く検出器に到達し、この時間を測定することで小数点以下4桁の精密質量が得られます。この精密質量を用いて化合物の構造推定が可能になります。前段に四重極を組み合わせる事で定量と定性両方の分析が可能なハイブリッドな質量分析計(Q-Tofシステム)もあります。


移動相と固定相について

移動相とはサンプルを注入してカラムで成分分離し、その成分を検出器まで運ぶための液体です。主に有機溶媒や水が使用されます。順相ではクロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、逆相では水、メタノール、アセトニトリルなどが使用されます。
また、固定相とはカラムのことを指しサンプルを成分ごとに分離するところです。
カラムは沢山の種類がありサンプルの極性やpH、官能基の種類によって使い分けます。代表的なカラムとしてODSカラム(Octa Decyl Silyl Column別名C18カラム)があり、逆相クロマトグラフィーにおいてはファーストチョイスのカラムとして使われています。

固定相(カラム)

移動相

分離手法

HPLCには様々な分離手法があります。サンプルの特性によって分離手法を変更する必要があります。極性が高いサンプルの場合は逆相クロマトグラフィー、極性が低いサンプルの場合は順相クロマトグラフィー、ポリマーの分析にはゲルパーメーションクロマトグラフィーなどを用います。それぞれについて説明します。

逆相クロマトグラフィー
サンプルの疎水性の差によってわける分離手法です。最もHPLCで使われる手法です。固定相にはポリマーなどの低極性の充填剤を使用します。代表的な物としてODSカラムが多く用いられます。移動相には溶出力が強い溶媒としてメタノール、アセトニトリルを用い、溶出力が弱い溶媒として水が用いられます。

順相クロマトグラフィー
サンプルの親水性の差によってわける分離手法です。固定相にはシリカゲルなどの高極性の充填剤を使用します。移動相には溶出力が強い溶媒としてクロロホルム、酢酸エチルを用い、溶出力が弱い溶媒としてヘキサンなどが用いられます。順相クロマトグラフィーの移動相に含まれる極少量の水などで分析結果に大きく影響を与える場合があります。

ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
Gel Permeation Chromatography  の略で分子量の分布を確認する分離手法で主に化学工業分野でポリマーの分析などに用いられます。移動相にはサンプルを良く溶解する溶媒を用います。固定相にはサンプルの分子の大きさにあったポアサイズのカラムを用います。GPC分析では基本的に標準品が無いため、主にポリスチレンなどを標準品として用いて、ポリスチレン換算で分子量を数値化します。

分離モード 固定相 移動相 特徴
順相 シリカゲルなど ヘキサン クロロホルムなど 脂溶性成分の分離
逆相 ODS(C18)など 水 メタノールなど 最も良く利用される手法
GPC ポリマーなど THF トルエンなど 分子量分布測定

分離手法の特長


分析結果

HPLCで分析した結果は下記のようなクロマトグラムで表示されます。縦軸にピーク強度、横軸に保持時間が表示されます。このピーク強度と保持時間を利用して定量及び定性を行います。

定量
標準品を用いて濃度を変えて分析し、検量線を作成します。サンプルを分析した際にピーク面積値が検量線のどの位置にあるかによって相対的に濃度を求める事が可能です。

クロマトグラム

検量線

定性
標準試料における各成分の保持時間と、サンプルのクロマトグラムの保持時間を比較することで定性を行います。

HPLC導入分野

HPLCはあらゆる分野で使用されております。
製薬:医薬品の品質管理では必ずHPLCを使用して業務を行っています。
食品:食品中の成分分析(糖やアミノ酸)で用いられます。
化学工業:ポリマーなどの合成確認にGPCが用いられます。

HPLC LC/MS に関するお問い合わせ先

マーケティング本部
分析計測機器営業部 分析機器グループ
TEL:03-5548-7120
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