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Q&A

微生物迅速検査装置とは?

更新日:2023年10月16日

蛍光染色法について

蛍光染色法は、微生物を蛍光染色試薬で染色した後、励起光を照射して、発した蛍光を蛍光顕微鏡で検出する方法です。
光点1個を微生物1個と捉えます。微生物の培養は必要ないため、短時間で微生物数を検査することが出来ます。
微生物の死菌、生菌、総菌をそれぞれ染色して、検出することが出来ます(総菌の場合は、1つの染色試薬で死菌と生菌を染色)。蛍光染色法では微生物の同定は難しいですが、微生物内の遺伝子上の特異的な部分に結合する、ラベル化した染色試薬を使うことにより同定も可能です。

蛍光染色試薬について

蛍光染色試薬に含まれる蛍光色素は、光に反応する化合物で、ある特定の波長の光(励起光)を吸収すると、その波長とは異なる波長の光(蛍光)を発する性質があります。この性質を利用して、検出試薬として活用されています。

例:AO(アクリジンオレンジ)試薬の場合
  AOは、502nmの励起光で、525nmの蛍光を発します。

 

 

(励起波長を変えると、発する蛍光波長は変わります。)

蛍光染色試薬には、微生物細胞内の遺伝子に結合して染色する「遺伝子結合染色試薬」と、微生物細胞内の代謝活性を利用して染色する「活性染色試薬」があります。
 


遺伝子結合染色試薬

遺伝子結合染色試薬は、試薬が細胞膜を透過して細胞内に入り込む、あるいは細胞膜の損傷部分から細胞内に入り込んで、遺伝子に結合します。

≪市販されている遺伝子結合染色試薬の例≫ 
PI、DAPI、AO、SYBR Green など

 

 

染色対象と蛍光染色試薬の例

染色試薬 染色
対象
染色原理 励起波長
(nm)
蛍光波長
(nm)
PI 死菌 膜透過性がないため、膜損傷部位のみから入り込み、遺伝子を染色する 530 620
DAPI 総菌 膜透過性があるため、膜損傷の有無は関係なく入り込み、遺伝子を染色する 358 461
AO(※1) 502 525
AO(※2) 420 650
SYBR Green 500 520

(※1)2本鎖DNA染色の場合
(※2)1本鎖DNA、RNA染色の場合


活性染色試薬

細胞膜を透過した染色試薬が、細胞内にあるエステラーゼやβガラクトシダーゼなどを介して物質を生成し、励起光を吸収して蛍光を発します。
また、染色試薬が細胞内に入ったときに生成されたたホルマザン(CTF)が細胞膜(表面)に沈着し、蛍光を発し検出されます。

≪市販されている活性染色試薬の例≫
CFDA、CFSE、SPiDER-βGal、CTC など


 

染色対象と蛍光染色試薬の例

染色試薬 染色
対象
染色原理 励起波長
(nm)
蛍光波長
(nm)
CFDA 生菌 細胞膜を透過し、細胞内の酵素活性により加水分解を受けることにより、蛍光を持つ物質となる 500 520
CFSE 500 520
SPiDER-βGal 520 550
CTC 細胞膜を透過し、細胞内の呼吸活性により産生される物質に還元され、蛍光色素が生成される 430/480 630

 


微生物迅速検出装置rapiscoでの蛍光染色試薬使用例(※3)

総菌検出用:SYBR Green I、SYBR Gold、SYTO 9
死菌検出用:SYTOX Green、Ethidium homodimer
生菌検出用:Calcein-AM、FDA

※3 検体によって、検証が必要です。

微生物検査法のいろいろ

微生物検査法には、蛍光染色法の他に、培養法、高感度ATP法ATPふき取り法などがあります。※4

  蛍光染色法 培養法 高感度ATP法 ATPふき取り法
検出方法 微生物を蛍光染色試薬で染色した後、励起光を照射して、発した蛍光を蛍光顕微鏡で検出する方法 微生物を生育しやすい条件(培地の栄養分、温度、pHなど)で培養し、形成したコロニーを目視で検出する方法 微生物生菌内のATPだけを抽出し、ATP発光液で発光させ、その発光量からATP量を測定する方法 ATP(+ADP+AMP)が酵素と反応するときに発する光の強さをATP量に換算して検出する方法
光点1個を微生物1個と捉える 基本的に、1つのコロニー(CFU※5)は1個の微生物が増殖して作られるものとみなし、CFU数は微生物の個数と同じと考えるため、培養法ではCFUという単位を用いる。(しかし、厳密には必ずしも1個の微生物から形成されたものとは限らない。) ATP量と菌数(CFU)は、同じ菌種、同じ環境下では一定の相関性があるため、(培養法での菌数を比較することで)1CFUはATP内包量に換算することができる。 ATPは様々な要因で分解されるため、分解物であるADPAMPも検出することで、食品製造、調理場、医療現場などで、洗浄や清掃評価として用いられている(この方法はA3法と呼ばれる)
検出対象 ・総菌
・生菌
・死菌
・生菌
(死菌は増殖できないため培養できない)
・生菌
(死菌細胞内のATPは除去する操作を加えるため、死菌は検出できない)
・有機物(生物由来)
簡便さ
 

 

 

 
特徴
 
・迅速
・総菌、生菌、死菌を検出できる
・標準的な検出方法
・コロニー形成までに時間を要する
・栄養や培養条件などを変えた限定条件下で、目的とする菌だけを培養することができる(同定が可能)
・操作の自動化、半自動化が可能 ATPは微生物だけでなく植物、動物の細胞内にも存在するため、微生物のみの検出とはならない
関連製品
 
・微生物迅速検査装置 rapisco   微生物迅速検査装置 Lumione

・微生物迅速検査装置 Rapica
 

※4 検出目的、検出対象などによります。
※5 Colony forming unit:コロニー形成及び集落単位の略

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