Q&A
微生物迅速検査装置とは?
蛍光染色法について
蛍光染色法は、微生物を蛍光染色試薬で染色した後、励起光を照射して、発した蛍光を蛍光顕微鏡で検出する方法です。
光点1個を微生物1個と捉えます。微生物の培養は必要ないため、短時間で微生物数を検査することが出来ます。
微生物の死菌、生菌、総菌をそれぞれ染色して、検出することが出来ます(総菌の場合は、1つの染色試薬で死菌と生菌を染色)。蛍光染色法では微生物の同定は難しいですが、微生物内の遺伝子上の特異的な部分に結合する、ラベル化した染色試薬を使うことにより同定も可能です。
蛍光染色試薬について
蛍光染色試薬に含まれる蛍光色素は、光に反応する化合物で、ある特定の波長の光(励起光)を吸収すると、その波長とは異なる波長の光(蛍光)を発する性質があります。この性質を利用して、検出試薬として活用されています。
例:AO(アクリジンオレンジ)試薬の場合
AOは、502nmの励起光で、525nmの蛍光を発します。
(励起波長を変えると、発する蛍光波長は変わります。)
蛍光染色試薬には、微生物細胞内の遺伝子に結合して染色する「遺伝子結合染色試薬」と、微生物細胞内の代謝活性を利用して染色する「活性染色試薬」があります。
遺伝子結合染色試薬
遺伝子結合染色試薬は、試薬が細胞膜を透過して細胞内に入り込む、あるいは細胞膜の損傷部分から細胞内に入り込んで、遺伝子に結合します。
≪市販されている遺伝子結合染色試薬の例≫
PI、DAPI、AO、SYBR Green など
染色対象と蛍光染色試薬の例
染色試薬 | 染色 対象 |
染色原理 | 励起波長 (nm) |
蛍光波長 (nm) |
---|---|---|---|---|
PI | 死菌 | 膜透過性がないため、膜損傷部位のみから入り込み、遺伝子を染色する | 530 | 620 |
DAPI | 総菌 | 膜透過性があるため、膜損傷の有無は関係なく入り込み、遺伝子を染色する | 358 | 461 |
AO(※1) | 502 | 525 | ||
AO(※2) | 420 | 650 | ||
SYBR Green | 500 | 520 |
(※1)2本鎖DNA染色の場合
(※2)1本鎖DNA、RNA染色の場合
活性染色試薬
細胞膜を透過した染色試薬が、細胞内にあるエステラーゼやβガラクトシダーゼなどを介して物質を生成し、励起光を吸収して蛍光を発します。
また、染色試薬が細胞内に入ったときに生成されたたホルマザン(CTF)が細胞膜(表面)に沈着し、蛍光を発し検出されます。
≪市販されている活性染色試薬の例≫
CFDA、CFSE、SPiDER-βGal、CTC など
染色対象と蛍光染色試薬の例
染色試薬 | 染色 対象 |
染色原理 | 励起波長 (nm) |
蛍光波長 (nm) |
---|---|---|---|---|
CFDA | 生菌 | 細胞膜を透過し、細胞内の酵素活性により加水分解を受けることにより、蛍光を持つ物質となる | 500 | 520 |
CFSE | 500 | 520 | ||
SPiDER-βGal | 520 | 550 | ||
CTC | 細胞膜を透過し、細胞内の呼吸活性により産生される物質に還元され、蛍光色素が生成される | 430/480 | 630 |
微生物迅速検出装置rapiscoでの蛍光染色試薬使用例(※3)
総菌検出用:SYBR Green I、SYBR Gold、SYTO 9
死菌検出用:SYTOX Green、Ethidium homodimer
生菌検出用:Calcein-AM、FDA
※3 検体によって、検証が必要です。
微生物検査法のいろいろ
微生物検査法には、蛍光染色法の他に、培養法、高感度ATP法、ATPふき取り法などがあります。※4
蛍光染色法 | 培養法 | 高感度ATP法 | ATPふき取り法 | |
---|---|---|---|---|
検出方法 | 微生物を蛍光染色試薬で染色した後、励起光を照射して、発した蛍光を蛍光顕微鏡で検出する方法 | 微生物を生育しやすい条件(培地の栄養分、温度、pHなど)で培養し、形成したコロニーを目視で検出する方法 | 微生物生菌内のATPだけを抽出し、ATP発光液で発光させ、その発光量からATP量を測定する方法 | ATP(+ADP+AMP)が酵素と反応するときに発する光の強さをATP量に換算して検出する方法 |
光点1個を微生物1個と捉える | 基本的に、1つのコロニー(CFU※5)は1個の微生物が増殖して作られるものとみなし、CFU数は微生物の個数と同じと考えるため、培養法ではCFUという単位を用いる。(しかし、厳密には必ずしも1個の微生物から形成されたものとは限らない。) | ATP量と菌数(CFU)は、同じ菌種、同じ環境下では一定の相関性があるため、(培養法での菌数を比較することで)1CFUはATP内包量に換算することができる。 | ATPは様々な要因で分解されるため、分解物であるADPとAMPも検出することで、食品製造、調理場、医療現場などで、洗浄や清掃評価として用いられている(この方法はA3法と呼ばれる) | |
検出対象 | ・総菌 ・生菌 ・死菌 |
・生菌 (死菌は増殖できないため培養できない) |
・生菌 (死菌細胞内のATPは除去する操作を加えるため、死菌は検出できない) |
・有機物(生物由来) |
簡便さ | 〇 |
△ |
〇 |
◎ |
特徴 |
・迅速 ・総菌、生菌、死菌を検出できる |
・標準的な検出方法 ・コロニー形成までに時間を要する ・栄養や培養条件などを変えた限定条件下で、目的とする菌だけを培養することができる(同定が可能) |
・操作の自動化、半自動化が可能 | ・ATPは微生物だけでなく植物、動物の細胞内にも存在するため、微生物のみの検出とはならない |
関連製品 |
・微生物迅速検査装置 rapisco | ・微生物迅速検査装置 Lumione ・微生物迅速検査装置 Rapica |
※4 検出目的、検出対象などによります。
※5 Colony forming unit:コロニー形成及び集落単位の略