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Q&A

CO2インキュベーターの選定ガイド

更新日:2018年05月31日

1. CO2インキュベーターとは?

温度・湿度・CO2濃度を一定で安定した環境にすることで、細胞をより生理的条件に近い状態で培養するための装置です。

■CO2インキュベータの基本的な機能・役割

①温度を一定に制御する
細胞や微生物を安定して生育するためには温度を一定に管理することが必要となります。一般的には哺乳類の体温(37℃前後)で使用されることが多く、昆虫や魚類の場合は低い温度で培養することもあります。

②湿度を保持する
培地が乾燥してしまうと細胞にダメージを与えてしまうため、培地が乾かないように高い湿度を保つ必要があります。加湿バットによる自然蒸発によって体内環境に近い湿度95%前後とすることが一般的です。

③CO2濃度制御
CO2濃度を制御することで、細胞の代謝による培地の酸化を防ぎ、培地のpHを最適な状態に保つことができます。一般的には、体内環境(体内のCO2分圧)に近い5%程度とすることが多いですが、培地によって推奨値が決まっていることもあります。

2. CO2インキュベーターの基本的な原理(仕組み)は?

基本的な構造としては、内槽の壁面を加温して槽内の温度をコントロールします。槽内には空気・CO2ガスを攪拌するためのファンが取り付けられており、CO2ガスは槽内のCO2センサにてコントロールします。槽内の底面には加湿用のバットを置き、バット内の水が自然蒸発することで槽内湿度を90%以上にキープすることができます。

■加温方式

加温方式は大きく分けてウォータージャケットとエアジャケットの2種類に分けられます。どちらも内槽の周囲に空間(層)を持ち、層を水で満たして水の温度で内槽温度をコントロールする方式をウォータージャケット、空気層として内槽壁面全体を加温する方式をエアジャケットと呼びます。

・ウォータージャケットのメリット・デメリット
(メリット)
・比熱の大きな水の性質から、保温特性に優れ、温度安定性がよい。
・壁面の温度ムラが少なく、温度分布に優れる。
・停電時でもすぐに温度が下がらず、試料の保護につながる。

(デメリット)
・水の温度変化に時間がかかるため、設定温度を変更した際、温度安定までの時間が長い。
・ジャケット水の準備など、設置・移動の際に手間が掛かる。

・エアジャケットのメリット・デメリット
(メリット)
・温度の立ち上がりが速く、設定温度を変更しても追従性がよい。
・乾熱滅菌運転(※)が可能。
・ウォータージャケットに比べ、軽量にできる。

(デメリット)
・ウォータージャケットに比べると、周囲環境温度の変化に影響されやすい。
・停電時に温度が下がりやすい。

※乾熱滅菌運転とは?
槽内の温度を高温にして一定時間運転することで、槽内を滅菌する機能です。アルコール除菌等では取り切れない菌を熱によって確実に死滅させることができます。

■CO2センサ

CO2センサの方式としてはサーミスタ式と赤外線式の2種類あります。サーミスタ式は構造が単純で安価ですが精度は低く、赤外線式は高価ですが高い精度での測定が可能です。

3. ケース別おすすめのCO2インキュベーターをご紹介

ケース1

・長期のサンプル保存や培養で設定温度を変えたり電源を落とすことがない
・とにかく温度安定性・安心感を重視
⇒ウォータージャケット方式のBNAシリーズがおすすめ!

ケース2

・短期的な培養やサンプル・設定温度を変更することが多い
・使用しないときは電源を落とすことがある
⇒エアジャケット方式のIPシリーズがおすすめ!

ケース3

・定期的に清掃するので内槽のお手入れがしやすいほうがいい
⇒槽内全てのコーナーをR構造としているIP/BNAシリーズがおすすめ!

ケース4

・コンタミ発生時に確実に滅菌したい
⇒乾熱滅菌運転が可能なIPシリーズがおすすめ!

ケース5

・扉開閉時など、外気流入による槽内汚染を軽減したい
HEPAフィルタによる空気循環機能を備えたIP/BNAシリーズ(クリーン循環オプション付)がおすすめ!

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