文字サイズ

[特別企画]ラボ・デザインシステムズを設立した3社代表によるクロストーク

[特別企画]ラボ・デザインシステムズを設立した3社代表によるクロストーク

[ アズワン株式会社 ] 代表取締役社長 井内 卓嗣
[ ラボ・デザインシステムズ株式会社 ] 代表取締役社長 森川 智
[ 株式会社プランテックアソシエイツ ] 代表取締役会長兼社長 大江 匡
― 2017年9月7日

2020年にご逝去されました大江様のありし日のお姿を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。

[特別企画]ラボ・デザインシステムズを設立した3社代表によるクロストーク

[ アズワン株式会社 ] 代表取締役社長 井内 卓嗣
[ ラボ・デザインシステムズ株式会社 ] 代表取締役社長 森川 智
[ 株式会社プランテックアソシエイツ ] 代表取締役会長兼社長 大江 匡
― 2017年9月7日

2020年にご逝去されました大江様のありし日のお姿を偲び、心からご冥福をお祈りいたします。

『ラボ・デザインシステムズ株式会社』とは

会社設立の背景と理念について

ラボ・デザインシステムズ株式会社 森川 智(以下、森川)
『ラボ・デザインシステムズ株式会社』は、コンセプトづくりからプランニング・企画・設計のできる『株式会社プランテックコンサルティング』、先進的なシステムから流通までをカバーして業界では圧倒的な存在感をもつ『アズワン株式会社』、研究者のニーズを基に、開発・設計・生産まで、モノづくりの立場からアプローチする『ヤマト科学株式会社』の3社が一体で、研究現場が必要としているトータルソリューションを提供することを基本コンセプトに2015年に設立した会社です。

株式会社プランテックアソシエイツ 大江 匡(以下、大江)
これから、10年20年の間に創薬の研究の仕方も変わってくると思います。そこを早くキャッチアップをしていくシステムが必要になってくると思います。例えば、研究課程のかなりの部分はロボット・AIがやることになり、もしかしたら、研究室(ラボ)の中に、人がいないという状態もあり得るかもしれません。
ただし、最終的な判断や起案は、人間がやらなければいけないと思います。そのためには、いろいろなアイデアやソフトウェアが必要になってきます。
そういう意味で、この3社以外にも協力者・パートナー様を多く参画していただく仕組み・をつくらないといけないと思います。まさに、「ラボ・デザインシステムズ」ですから、どうやって次のラボを作っていくかという仕組みづくりをすることが重要だと考えています。

アズワン株式会社 井内 卓嗣(以下、井内)
私ども(『アズワン株式会社』)は物品のみならず、サービスを含めて、人・モノ・カネにまつわるすべてのものを提供していける強みを生かし、(研究者の方に)研究に集中して頂ける環境を作ることをお手伝いしていけると思っています。
人と人とが交わって、対話していきながら新しい息吹を生み出していく中で、設計や建築はとても大切です。
『株式会社プランテックコンサルティング』は斬新な環境を提供されていて、『ヤマト科学株式会社』は歴史と信頼がある会社で、そこに私ども(『アズワン株式会社』)は、流通として卸売の立場から、全国に1万拠点の販売店と、その先に100万のユーザーがつながっているので、その情報をうまくリンクさせていきながら、ワンストップでいろいろなものを提供していければと思っています。

3社のシナジーを発揮する

「ラボ・デザインシステムズ株式会社」の事業内容について

森川 新会社発足の母体になったのは、研究所向けの資産管理システムです。研究所には機器・設備を含めてたくさんの資産がありますが、これまでは、個別に管理・運用されていて、トータル管理は十分ではありませんでした。それを『株式会社プランテックコンサルティング』のシステムを用いることによりトータルで管理できるようになり、それがコアの資産になっています。現在は研究所だけでなく、医療機関向けのシステムへと発展しています。
また、3社はそれぞれが多方面で広いネットワークを持っています。
『株式会社プランテックコンサルティング』は研究所だけでなく、病院・オフィス・商業施設も含めて幅広い企画・設計機能を持っておられ、『アズワン株式会社』は研究所、病院向けの豊富な品揃えと物流網を有し、革新的なシステムを持っておられます。『ヤマト科学株式会社』も研究所だけでなく医療機関も含めた分野への販売ネットワークを持っています。
このチームが外部の協力者を巻き込んでいくと更に大きな輪が広がっていきます。この会社は設立して3年ですが、業界の中でも注目されており、このネットワークに新たに入りたいという動きも出てきています。

国際競争力をつけるには“スマートラボラトリー化”が急務

未来のラボ(研究室)に必要なこととは

大江 私は、これから、スマートラボラトリーというものが必要になってくると思います。今、ラボの中というのは、自分の手を無菌状態のボックスなどへ突っ込んで、実験していると思います。現在は試験管とかビーカーは『手で持つ』というのを概念にしているからです。
しかし、将来は、天井にロボットアームがついていて、あるプログラムがなされると、それにのっとっていろいろな研究がなされていくと思います。もし、ロボットアームだとしたら、指は5本ではなく、10本でもいいわけです。例えば、20㎏のものを人間が片手で持ちあげることは難しいですが、ロボットアームであれば片手で持ちあげられます。そうすると機材や器の形も変わってくると思います。
こういうことを見通し、様々な協力者を得て、次のラボは何か? を考えないといけないと思います。おそらく、まだ、『スマートラボラトリー』と言った人はあまりいないと思いますが、もうすぐ出て来ると思います。

森川 最近、製薬会社の研究所や工場のトップと面談すると、話題は実験室の自動化が中心です。我々はすでに『スマートロボティック・ラボ・アシスタント』という、まさに大江さんのおっしゃったようなコンセプトのロボットをやっています。実験の現場というのは、非定型的な業務が多く、これまでロボット化は進んでいませんでした。
熟練の研究者、あるいは補助者の方が、『長年の経験と勘とノウハウで実験する』と良い結果が出ると言われていましたが、それだけでは研究現場のビッグデータにはなりません。ビッグデータにするためには、数分間隔で何十回、何百回とロボットが実験を行う必要があり、大江さんのご指摘の通り、そういうニーズが間違いなくあります。
例えば、細胞培養のためにシャーレにピペットで試薬を注入する場合、蓋が無いと天井からの落下物でコンタミが起きてしまいます。そこで我々はロボットの手首から先をカスタマイズして、シャーレの底と蓋を一緒に持つように改造しています。人間ではできない作業をロボットにさせる、単に自動化するのではなく、今までできなかったこと、悩んでいたことをロボットが解決してくれると思います。

大江 そのうちシャーレ自体の形が変わりますよ(笑)。別に、ロボットが人型の形をしている必要は全くないです。例えば、お掃除ロボットって床に這っている形ですが、あれは正しい形です。
今後、専用ロボットというのはあちこちでできてきて、ロボットの概念は人間ではなくなります。そういう仕組みがラボの中に入ってくる時代が来ると思います。
ラボは簡単に言うと、人間がやるから24時間働けないのであって、ロボットは24時間稼働できますから。すごい速さでデータを取って、すごい速さで創薬プロセスを進めるという仕組みができると思います。それを早急にやらないと日本は国際競争に負けます。

井内 我々は、かたや中庸的な立場で、こういった最先端の近未来的な企業との、橋渡しをする中間として位置していると思っています。
今、工場におけるIoTが注目されているように、研究所におけるIoT、つまり研究データの見える化です。
個々の機械は各メーカーによってデータの取り方が異なるため、個別でリンクしておらず、現状はなかなかデータが取れておりません。その部分のトレーサビリティを取って原因を追究していく必要があります。メーカーが異なったとしていても、無線のIDAなどを利用し、データが取れるようにすることで見える化を進めることが可能です。
施設全体を中央で集中的に管理して、何か問題があれば対処する、未然に問題を防ぐ、といった視野を取り入れていきたいと考えています。

人間とロボットとの役割分担による研究のスピード化

今のラボの課題や改善すべき点は

大江 改善点だらけですが・・・・(笑)。何かを混ぜたりする『作業』は現在も速くできます。一番難しいのは、それを実験用の動物に与えてデータを取得するまでの時間がかかることです。
そのため、実験データがたくさんある巨大なラボほど勝つ。例えば、ある動物実験でデータを取るとして、無菌の動物に試薬の濃さを少しずつ変えていったものを与えていきます。
10匹に与えるより100匹に与えるほうが勝ちます。細かく刻んでいって、ここが『当たり』っていうのを見つけられます。そうすると、かなり巨大な資本でないと、運営がなかなか難しい。そうでないと、創薬ができないということが起こってきます。
先ほどのコンピューター、ロボットシステムも含めて、巨大化していかないと、なかなか国際競争で勝てない時代になっています。

ただ、一方で、AIとかロボットが解決していくかも しれません。効率化して、人を少なくして、24時間できるということになれば、人件費という部分ではかなり少なくできると思います。資本投下で解決することもできるので、ラボが小さくても、ロボットの力で乗り越えられることがあるかもしれない。

森川 研究現場では安全・安心が、より注目されるという点もあげられます。昔の研究現場では、有毒物質などは隔離していましたが、最近は「ナノマテリアル」という目に見えないレベルの物質を扱う場合、知らず知らずのうちに、皮膚の毛穴から人体に入って影響を及ぼすという、研究室・実験室におけるバイオハザードの懸念もあります。
また研究所ではヒューマンエラーによる事故も無視できない面があり、これらはハイテクのみでは解決できない面もあり、ローテクの側面も含めて、研究の現場における安全・安心のための解決策を提供していきたいと思っています。

ラボの設計やデザインの在り方について

大江 薬品メーカーからはスピードをさらに求められると思います。先に薬を出さないと、競争に負けてしまうため、スピード力という観点から、ラボをデザインしていかなければならないと思います。
逆に、間違いからできた薬が何割かはあります。たまたまこの薬を作っていたら、ココに効いたという事例が結構あります(笑)。
人間ができることはこの間違いとクリエイティブな要素が求められる企画です。一方、ロボットは間違えることと、ゼロの状態から企画を出すことは不得意です。この人間とロボットの混合によるスピード化をどれだけできるのか、ということが重要であると思います。
先ほど、スマートラボと言いましたが、一方で、人間がリラックスして働く場・環境というのはすごく重要で、その中で起案・企画ができていくという仕組みを作らないといけないと思います。
研究者がいる場所はとっても気楽なリラックスできる場所があって、アメリカのグーグル社みたいに、遊び場か?と思うくらいの場所があって、一方ではロボットがいて(研究を)ガンガン詰めていく。それがラボの次の姿だと思うんです。

井内 まさに、クリエイティブなことというのはロボットにできなくて、人間にしかできないことです。そういった環境を作ることを、システムにおいて提供していければと思います。

ラボづくりの総合コンサルタントとして、海外も視野に。

今後のビジョンについて

森川 3社のリソースを活用したネットワークで、現在の三角形を相似形で大きくしていくことだと思います。
 名前が「ラボ・デザイン」なので「設計」中心にイメージされますが、それだけでなくトータルシステムソリューションの提供を目指していく。そして『システムズ』なので、それらが複数だということです。名前は未来を象徴していると思います。

大江 まさにその通りです。(笑)

井内 モノを届け、リアルビジネスを行い、流通させるという機能は、今後も絶対に必要だと思います。日本全国だけでなく、ASEANも含めてサプライチェーンを作っているので、これからはグローバルも視野に入れた会社になれたらと思っています。