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Q&A

恒温・乾燥器等の性能表示の見方

更新日:2022年07月13日

はじめに

当社の乾燥器・恒温器等の製品は、温度試験槽に関するJIS規格やJTM規格に準じて試験を行い、性能を表記しています。規格の種類の違いや改訂により、温度性能の表現(名称)や試験方法(測定位置や算出方法)が変わっているため、当社製品の中でも温度性能に関する表記が製品によって異なり、分かりにくいと感じることがあると思います。
規格ごとの内容の比較と、当社製品の評価結果を例として、温度性能に関して説明いたします。

1. 温度試験槽の性能に関する規格とその推移

IEC/JIS:公的規格 JTM:業界規格(日本試験機工業会規格)
● IEC 60068-3-5(電気機器に関する国際標準規格)
● JIS C 60068-3-5(日本産業規格)
  環境試験方法―電気・電子-温度試験槽の性能確認の指針
● JTM K05(廃止)
● JTM K07 温度試験槽-性能試験方法及び性能表示方法
IEC/JIS JTM 備考
1991年   JTM K05 現在は廃止 ※
2001年 IEC 60068-3-5 JTMとは異なる内容
2006年 JIS C 60068-3-5 IECを日本版へ
2007年   JTM K07 JISとの整合性を図り、実用面での補足を含め改正
2018年 IEC 60068-3-5 改   性能確認手順が明確ではない箇所があったため改正
2020年 JIS C 60068-3-5改   IECを日本版へ

 

2. 有効空間

有効空間とは、規定した条件が許容値内に維持可能な温度試験槽内の部分です(図の陰影部)。
温度測定は有効空間の隅8か所と中心の合計9点に温度センサーを設置します。

項目 JIS 2020/2006
JTM K07
JTM K05
(廃止)
各内壁面から除く距離 1/10 mm 1/6 mm
最小値 体積1000L以下:50mm
1000~2000L:100mm
2000L超:150mm
50mm
最大値 - 300mm



有効空間

 

3. 温度性能に関する名称の比較

【JIS 2020/2006・JTM K07】と【JTM K05】 では、温度性能に関する表現(名称)が異なります。
当社では旧規格で表現されていた製品の仕様は変更せず、規格改訂以降に開発された製品から新規格を採用し、カタログに表記しています。

JIS 2020/2006 JTM K07 JTM K05(廃止)
温度変動 温度調節精度
(改訂後は温度変動幅)
温度勾配 温度分布
空間温度偏差
温度変化速度 温度極値到達時間
温度変化速度
温度上昇時間

 

4. 温度変動と温度調節精度

安定状態での時間経過における温度の変動の度合いを意味します。

項目 JIS 2020
JTM K07
JIS 2006 JTMK05
(廃止)
名称 温度変動 温度調節精度
(改訂後は温度変動幅)
測定位置 9点(槽中心及び有効空間の隅)
(1/10mmを除く空間)
槽中心1点
算出方法 全測定点から得られたデータの標準偏差σn-1を求め、2倍し±を付け、そのうちの最大値 全測定点から得られたデータの最高温度と最低温度の差のうちの最大値 槽中心の平均温度よりも大きい値と小さい値の平均値求め、この差を2で割り、±を付けて表示
数式 Max(±2σn-1 Max(最高温度-最低温度) ±{(平均最高温度-平均最低温度)/2}
表示方法 ±〇℃ 〇℃ ±〇℃

 


温度変動(JIS 2020)の例

 


温度変動(JIS 2006)の例

 


温度調節精度(JTM K05)の例

 

5. 温度勾配と温度分布精度

安定状態での空間における温度のばらつきを意味します。

項目 JIS 2020/2006
JTM K07
JTM K05
(廃止)
名称 温度勾配 温度分布精度
測定位置 9点(槽中心及び有効空間の隅)
1/10mmを除く空間)
9点(槽中心及び有効空間の隅)
1/6mmを除く空間)
算出方法 全測定点から得られたデータの平均値のうち、その最高値と最低値の差 全測定点から得られたデータから槽中心以外の点のデータを槽中心平均値よりも高い値と低い値に分けてそれぞれの平均値を求め、この差を2で割り、±を付けて表示
数式 平均温度最高値-平均温度最低値 ±{(高温側平均温度-低温側平均温度)/2}
表示方法 〇℃ ±〇℃

 


温度勾配の例

 


温度分布精度(JTM K05)の例

 

6. 温度変化速度と温度上昇時間

項目 JIS 2020/2006 JTM K07 JTM K05
(廃止)
名称 温度変化速度 ①温度極値到達時間
②温度変化速度
温度上昇時間
測定位置 槽中心1点
算出方法 最低温度安定後、最高温度に設定し、槽中心温度が温度範囲の10%と90%の間の時間を監視し、温度変化を経過時間で割る ①槽中心温度が周囲温度から温度極値に到達するまでの時間
②左記同様
槽中心温度が周囲温度から温度制御範囲の最高温度まで到達または通過するまでの時間
数式 Δt/T
(温度変化/経過時間)
① -
②Δt/T
表示方法 〇℃/min ①〇分
②〇℃/min
〇分

 


温度変化速度の例

 


温度上昇時間の例

 

7. 送風定温恒温器 DKM601 の規格ごとの性能(実測値)比較

規格の種類によって温度性能の数値が異なることを下記の表に示します。
同じ装置(送風定温恒温器 DKM601)を用いて、同じ試験条件において、規格を変えて測定した結果です。

室温23℃/100V/50Hz、設定温度260℃ ※

JIS 2020
JTM K07
JIS 2006 JTM K05
(廃止)
温度変動 温度調節精度
±0.5℃ 0.9℃ ±0.06℃
温度勾配 温度分布精度
8.0℃ ±1.7℃

 

8. 送風定温恒温器 DKM 新旧型式による性能(実測値)比較

モデルチェンジによって温度性能が向上したことを下記の表に示します。
同じ試験条件において、装置を変えて測定した結果です。

室温23℃/100V/50Hz、設定温度260℃ ※

項目 (新)DKM601
実測値

(旧)DKM600
実測値
JTM K05 温度調節精度 ±0.06℃ ±0.11℃
温度分布精度 ±1.7℃ ±2.2℃
JIS 2020 温度変動 ±0.5℃ ±1.3℃
温度勾配 8.0℃ 8.8℃

 

注意事項

※7項及び8項の数値は試作機1台における試験結果の実測値となります。
温度性能仕様は周囲温度や電圧等の変動も考慮し、安全率を掛けた値としているため、表中の数値よりも大きい値に設定しています。