製品情報
型式:AFM100
走査型プローブ顕微鏡(SPM/AFM)とは?
走査型プローブ顕微鏡(SPM/AFM)は、プローブ(探針)と試料間に作用するさまざまな物理量を検出し、微小領域の表面形状や物性を測定する顕微鏡の総称です。その測定モードは、基本モードと、そこから派生した様々な物性マッピングが可能な多機能モードの二つに大別することができます。
ここでは、SPMの最も基本的なモードである、走査型トンネル顕微鏡(STM)、原子間力顕微鏡(AFM)、ダイナミック・フォース・モード(DFM)、ならびに、表面形状の観察だけではなく、摩擦や粘弾性のような機械的物性イメージング、電流や磁気力などの電磁気物性イメージング等を可能にする多機能モードについて解説します。
原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)は探針と試料に作用する原子間力を検出するタイプの顕微鏡です。広義ではSPMと同義ですが、コンタクトモードやコンタクトAFMと呼ばれることもあります。AFM探針は、片持ちバネ(カンチレバー)の先端に取り付けられています。この探針と試料表面を微小な力で接触させ、カンチレバーのたわみ量が一定になるように探針・試料間距離(Z)をフィードバック制御しながら水平(X、Y)に走査することで、表面形状を画像化します。コンタクトAFMモードは多機能型SPMの基本になる測定モードで、カンチレバー種類や信号検出の方法を変えることにより様々な物性測定が可能となります。
原子間力顕微鏡(AFM)構成図
カンチレバーの押し付け力(たわみ信号)は「光てこ方式」により検出されます。下図の様に半導体レーザーをカンチレバー背面に照射し、反射したレーザー光を上下で2分割または上下左右に4分割された位置センサーで検出します。AFMでは、たわみ量が常に一定になるようにスキャナの伸び縮みを制御(Z電圧フィードバック)しながら試料表面上で水平(X、Y)に移動させることで試料表面の形状を得ることができます。
トータルスループットの向上とSEMとの親和性を追求したAFM
【特徴】
● 装着しやすいプリマウントカンチレバーを選択可能
● ワンクリックでの測定から解析をオートパイロット機能で実現
● オペレータ起因の測定誤差排除を追求
● SÆMic.によるSEM-AFM同一場所観察を支えるAFMマーキング機能(オプション)
「AFM測定におけるトータルスループットの向上」
多くのAFMユーザが『面倒な操作と、測定者起因のデータばらつき』の悩みや疑問を抱いています。本装置では『プリマウント方式カンチレバー』や『自動パラメータ設定機能』『オートパイロット』の活用によって、測定者起因の影響を軽減するとともに測定のトータルスループットの向上を実現しました。
プリマウント方式による確実なカンチレバーワンタッチ交換(破損を避け操作性向上)
AFM測定においてカンチレバー交換は必須です。従来は、ハンドリングミスによるカンチレバー破損や、カンチレバー固定位置ずれによるレーザーアライメントの手間、Qカーブが上手く検出されない事象が利用者の作業性を妨げていました。プリマウントレバー方式は、これらの問題を解決します。
オートパイロットによるワンクリック自動測定/解析(トータルスループット向上)
測定から粗さ解析までの一連の動作をワンクリックで実現します。オートパイロット機能により、選択された条件に基づく自動測定~自動粗さ解析がワンクリックで実現可能になります。サンプル毎にレシピファイルを設定しておくことで、様々なサンプルの測定時におけるトータルスループットが向上するとともにスキャナの走査範囲内での連続する自動多点測定にも対応します。また、レシピファイルには自動パラメータ調整機能であるRealTune®IIや先進測定モードであるSISモードを組み込むことも可能です。これらを組み合わせることで、作業性向上と測定者起因による取得データのばらつき回避での信頼性向上効果も発揮します。
オートパイロット機能
測定から解析までをワンクリックで実現
● 広域試料内の自動多点測定対応
● 同種の複数試料を交換しながらの連続測定にも便利
● 表面粗さ数値データのcsv出力も可能
オートパイロット機能を支えるキーテクノロジー
● サンプル毎に最適条件を自動調整
● 高アスペクト形状でも優れた形状追従性
● 探針の摩耗低減
オートパイロット自動測定によるCNF多点レシピ自動測定&解析事例
多点レシピ自動測定
広域AFM像中の最適な計測箇所を任意に複数設定し自動測定します。
マイカ基板上に低密度で分散させたセルロースナノファイバー(CNF)を、広域画像をAFMデータ取得したのちに、オートパイロット機能で自動多点測定を行った事例です。
自動解析
オートパイロット機能では、各データごとに傾き補正を含む様々な解析が組み込めます。測定完了と同時に全データの解析が自動実行されます。
シリカ粒子が付着したSi基板上を、オートパイロット機能の自動多点測定でAFMデータを取得したのちに、自動で粗さ解析行った事例です。
「ユーザーで得られたAFMデータの不安を払拭」
多くのAFMユーザが『正確なデータが取得できたのか?』との悩みや疑問を抱いています。
本装置では『SLDヘッド』と『熱源抑制構造』の採用によって干渉縞ノイズとドリフトの影響を軽減し、『探針評価機能』や『SIS(Sampling intelligent Scan)モード』の活用によって信頼性を向上させました。
ハイパワーSLDヘッドによる低ノイズ化(ノイズ削減による信頼性向上)
AFM100/AFM100 Plusは、光ヘッド部分にスーパールミネッセントダイオード(SLD)を採用し、レーザ干渉の影響を軽減することで、レーザ干渉起因のノイズの発生を抑制するとともにトータルでのノイズ低減と高感度化を実現しました。
・SLDの特徴である低コヒーレンス性により、高出力でも干渉ノイズが低減されます。
・光出力の高出力化により検出器のショットノイズを抑え高感度化を実現しました。
熱源抑制構造によるドリフト対策(熱ドリフト低減による信頼性向上)
熱源抑制機構でユニット熱源を徹底して排除することで、従来と比べて30%以下のドリフト量を実現しました。
ドリフト量0.03nm/sec以下
・時間がかかる測定でも熱ドリフトの影響によっての取得画像がブレ・歪みが生じにくくなります。
・同じ場所の連続測定(タイムラプス測定)時の画像のブレ・歪みを防ぎやすくなります。
探針評価機能によるカンチレバーの探針径管理(先端径管理で信頼性向上)
AFMでは、使用するカンチレバーの探針径によって測定結果が大きく異なります。
そして、従来は粗さ測定の数値に結果に疑問が生じた際、カンチレバーの探針径の数値把握ができなかったため数値の違和感が、実際の試料表面の変質によるものなのか、探針の摩耗起因なのか測定パラメータ設定起因なのかという検証作業が困難でした。
探針評価機能は、ナノスケールの品質管理に欠かせない検証ファクターのひとつであるカンチレバーの探針径の数値化を実現することで、従来困難であった測定条件の管理把握の実現によるデータの信頼性向上に貢献します。
・カンチレバー探針径の管理によりデータ信頼性が向上します。
・カンチレバー交換のタイミングが判りやすくなります。
先端径の計測方法
・Si製の探針検定用標準試料は形状が剣山状に多数並んでおり、探針評価に使用します。
SISモードによる追従性向上(針先ダメージの軽減と追従性向上で信頼性向上)
SIS(Sampling Intelligent Scan)モードは、測定ポイントのみで探針を接近させて形状や物性情報を測定するとともに、水平方向の力を作用させずに、吸着が大きな表面や粗い凹凸などでも安定した測定ができるよう、探針の接近や退避を自動制御する測定モードです。
・上り斜面だけでなく下り斜面でも追従性を向上させて、信頼度の高いデータ取得が可能となります。
・柔らかい試料の変形を軽減します。
・カンチレバー針先の摩耗を軽減します。
各モードの探針の動きのイメージ
SISが効果を発揮しやすい試料の例
凹凸や段差が大きな試料
追従性を向上させて、トレースの信頼性を向上させつつ針先のダメージを抑制します。
柔らかく変形しやすい試料・粘着性のある試料
柔らかいグリスも変形させずに正確にトレースしています。
試料:グリス
形状アーティファクトの軽減
DFMでは、凹凸情報が混入してしまう“位相像”での形状影響の軽減が可能。
試料:均一膜固体高分子電解質膜
「他装置との親和性を向上させるために」
『SÆMic.』とは、SEMによる形状、組成、元素分析などとAFMによる3D形状計測と機械物性情報や電磁気物性情報などを同一箇所で手軽な解析評価を実現する、SEMとAFMのコラボレーションによる日立ハイテク独自の新たなソリューションです。
AFM/SEMの特徴を生かした相関解析(故障解析の不具合解明率の向上)
日立ハイテクのAFMを語るうえで欠かせない特徴のひとつに、電子顕微鏡(SEM)装置等との親和性を高めることで、従来にない多角的な解析手法を確立した【SÆMic.】の提案があります。
AFMマーキングによる手軽な相関解析(リンケージの効率と高精度化を実現)
AFMで特定した関心領域を、あらゆるSEMで容易に同一箇所観察を実現する革新的ツール、AFMマーキングは【SÆMic.】を支える技術のひとつで、AFMで観察したポイントをマーキングする「AFMマーキング」機能を用いることでSEMでの同一箇所観察を実現します。
・AFMマーキングにより小型AFMでのリンケージを実現
・電動ステージや専用共通ホルダが不要
・FE-SEMだけではなく、卓上タイプやC-SEMにも適用可能
AFMマーキングを用いた解析事例
Al合金研磨面でのKFM電位像によって得られた電位差の解釈を行うため、SEM/EDSにて同一箇所での観察を実現するためにAFMマーキング機能を用いた事例。
型式 | AFM100 |
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検出方式 | 光てこ方式 |
光源 | SLD(スーパールミネッセントダイオード) |
カンチレバー加振方式 | ピエゾ励振 |
基本仕様 | RMSノイズレベル:≦0.03nm、面内ドリフト:≦0.03nm/sec |
試料サイズ | 最大35mmφ、厚さ10mm、(最大50mm角、厚さ20mm) |
スキャナ(走査範囲) | (XY:20μm/Z:1.5μm、XY:100μm/Z:15μm、XY:150μm/Z:5μm) |
光学顕微鏡 | 簡易光学顕微鏡(視野XY:1.6×1.2mm) |
基本機能 | AFM、DFM、PM、FFM、SIS-形状 |
除振・防音機構 | 卓上除振台 |
カンチレバーホルダ | プリマウントホルダ、マルチホルダ(いずれか1つもしくは両方を選択) |
測定対応環境 | 大気、液中、加熱(室温~250℃)、液中加熱(室温~60℃) |
拡張測定モード | SIS-ACCESS、SIS-QuantiMech、PicoSTM、機械物性システム(LM-FFM、VE-AFM、Adhesion)電気物性Ⅰ(MFM、KFM(AM/FM)、EFM(AC)、EFM(DC)、PRM)電気物性Ⅱ(SSRM、Current(Nano)、Current(Pico)) |
その他機能 | 熱源抑制構造、インパクトステージ、探針評価機能、オートパイロット機能、自動パラメータ調整機能、オートゲイン機能、セルフチェック機能、ソフトウェアダウンロードサービス、AFMマーキング、100Vバイアス増設BOXシグナルアクセスモジュール、拡張IOケーブル |
電源容量 |
AC100V±10 V
15A
1系統、D種接地 接地付コンセント |