製品情報
AFMで高速、高感度、高精度測定を実現
原子間力顕微鏡(AFM)とは走査型プローブ顕微鏡の高分解能タイプであり、鋭利な探針を使用してラスタースキャンを行うことで、物質を原子スケールやナノスケールで測定・可視化することができます。
AFMのセンサはカンチレバーと呼ばれ、自由端の近くに鋭利で微小な探針が付いています。探針は、サンプルに十分に近づくと、サンプル表面の力の影響を受けます。その結果、探針が動き、カンチレバー全体が曲がります。カンチレバーの曲がり(たわみ,反り,しなり)は、レーザーと光検出器(光を電気信号に変換するデバイス)を用いて光学的に検出されます。ピエゾアクチュエータと呼ばれる位置決め用のハードウェアを使用して、カンチレバーとサンプル間の相対位置を3軸方向に変えます。
AFM/SPMは、分子・細胞生物学、ボトムアップアセンブリ、2次元材料などの基礎研究から、マイクロエレクトロニクス、プラスチック・ゴム、エネルギー貯蔵・発電デバイスなどの産業分野にいたるまで研究開発のあらゆる分野で利用される「頼れる」ツールとなっています。
・スキャンレート(走査周波数)が10Hzと高速測定を実現
・blueDriveタッピングAFMにより、安定かつ高精度な測定を実現
・計測誤差を極限まで小さくする低ノイズ Closed Loop センサ標準装備
・電気測定、表面電位、液中測定など様々な測定モードに対応(オプション)
・上位機種へのアップグレード可能(オプション)
一般的なAFMでは、カンチレバーを保持するホルダ近くに設置されたピエゾ素子(シェイクピエゾ)でカンチレバーホルダ”ごと”カンチレバーを励振する「ピエゾ励振法(音響励振ともも呼ぶ)」が採用されています。
Cypher L+で搭載可能な新技術「blueDrive」は、カンチレバーの励振方法の一種ですが、励振用のパルスレーザーをカンチレバー背面に照射することで生じるバイメタル効果と温度勾配によりカンチレバー”だけ”を励振する方法で「光熱励振法」と呼ばれます。
「blueDrive」で得られる振幅は大気中・液中などに関わらず常に安定です。そのため、サンプルとの相互作用力を様々な環境下で安定かつ一定に保つことができ、高速スキャンをしながらもチップ摩耗を最小限に抑え、その交換頻度も低減します。
blueDriveタッピングAFMの励振技術
パルスレーザ(青)を照射しカンチレバーを加振し、形状によるカンチレバーの変位を別のレーザ(赤)で検出します。
ポリスチレン / 低密度ポリエチレン
blueDriveタッピングAFMで高速イメージングした結果です(256x256、10Hz)
26秒という短時間で測定が完了します。
256秒の測定結果と遜色ない結果が得られます。
表面電位顕微鏡(KPFM)は、AFM を元に開発された試料の電位差を観察できる機能です。試料の凹凸像と電位像は同時に取得することができ、材料構造やデバイスの電気物性評価に有用です。一般的な KPFMで は、セッティングが面倒でありますが、Cypher L+では複雑さを取り除き、タッピング モードと同じ 4 ステップのワークフローでデータを取得することが可能です。
KPFMによるシリコン上のセミ-フッ素化アルカン(F14H20)
静電気力を測定する従来の振幅検出KPFMに対して、静電気力の勾配に由来するピークを検出するサイドバンドKPFM、およびその発展系であるヘテロダインKPFMは、浮遊容量の影響を受けにくく、空間分解能の高い測定を実現します。
コンダクティブAFM(CAFM)では、ORCA (オルカ、Optimized Resistance Conductance Amplifier) と呼ばれる技術を用いた専用のカンチレバーホルダ(ORCAホルダ)で測定を行います。導電性プローブを用い、サンプルにバイアスを印加しながら、コンタクトモードでサンプル表面をスキャンします。プローブがサンプル表面をスキャンしている間、プローブとサンプルの間で検出された電流が記録され、導電性画像が得られます。強誘電体、ナノチューブ、導電性高分子など、さまざまなサンプルに対する電流測定や任意点のIVカーブ測定も可能です。
ORCA カンチレバーホルダ
ORCAカンチレバーホルダがCypher L+本体に接続されると、プラグアンドプレイで自動的に感度が認識されます。
グラファイト表面に蒸着したメラミンとシアヌル酸
メラミンとシアヌル酸はグラファイト表面に蒸着すると、12 nm のモアレパターンと 0.97 nm の分子結晶構造を持つ六角形のネットワークを形成します。
画像は、シングルゲイン ORCA ホルダを用いて、a) 6.5 Hz、b) 10 Hzのスキャンレートで取得されました。
標準搭載のソフトウェア「Ergo」は洗練されたインターフェースで直感的に操作可能で、初めての方でも複雑なトーレニングが不要で、簡単に使用出来ます。
Ergo のワークフローにより、数回のクリックで、新しいプローブの取り付けからレーザーの位置合わせまでをガイドします。 また、プローブのバネ定数の校正には独自のテクノロジー「GetReal」(ゲットリアル) により、カンチレバーを測定毎に自動調整します。これによりワンクリックでキャリブレーションが可能となり、一貫性のある結果が日常的に得られます。
hBN(立方晶窒化ホウ素)基板上の2層グラフェン
(左) コンタクトAFM、(右) 水平力AFM
グラフェン層間のねじれ角による大きなパターンと、グラフェンとhBN の格子不整合による小さなパターンの、2 つのモアレパターンが観察されています。
カラースケールは、高さ画像で ±70 pm、水平力AFM で ±6 mV
二軸延伸ポリプロピレン
二軸延伸ポリプロピレンは食品包装材として使用されています。ここでは、加工条件によって変化するナノ構造を、タッピングAFMで可視化しました。
カラースケールは ±8 nm
半フッ素化アルカン
半フッ素化アルカン(F(CF2)14(CH2)20H) は、シリコン基板上に自己組織化構造を形成します。極性の高い分子であることから、表面電位顕微鏡(KPFM)において強い電位コントラストが得られます。
カラースケールは±220 mV。
窒化ガリウム(GaN)
GaNの表面粗さは、デバイスの性能に影響を与えることがあります。この画像は、”反応性イオンエッチング(RIE)時のバイアス印加がGaNサンプルの表面粗さと表面近傍の損傷に及ぼす影響に関する研究”により得られたものです。RIEは、オックスフォード・インストゥルメンツのPlasmaPro 100D Cobra システムで行われました。左の画像はエッチング前の表面、右の画像はエッチング後の表面画像です。
カラースケールはいずれも ±500 pm
SiC基板上にMBE成長したAlN膜
SiC基板上にMBE成長したAlN膜表面の螺旋転位のタッピングAFM像。
カラースケールは±1 nm。
*イメージ提供:コーネル大学イエナシン研究所 ReetChaudhuri博士
型式 | Cypher L+ |
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