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Q&A

【お客様の声:光アイソレーションプローブ】大阪大学 様

更新日:2024年10月18日

大阪大学 大学院 工学研究科 電気電子情報通信工学専攻 システム・制御工学講座パワーシステム(デバイス)領域 舟木研究室では、Micsig社の 光アイソレーションプローブ をご使用いただいております。この度、舟木先生にお話を伺いました。

舟木研究室ではどのような研究をされておりますか?

 我々は、カーボンニュートラルを実現することを目標としてパワーエレクトロニクスの心臓部である電力変換回路で用いられるパワーデバイスや受動素子に注目し、電力変換回路の低損失化、高機能化を実現するための実装・評価技術の開発を行っています。
 
 最近注目されているSiCやGaNなどの新材料であるワイドバンドギャップ半導体を用いたパワーデバイスは、従来のSiを用いたパワーデバイスに比べてオン抵抗が小さい為、大電流に対して導通損失が少なく、高電圧を高速にスイッチングできるといった特長を持っています。
また電力変換回路で用いるインダクタ・トランスやキャパシタを小さくするために高速スイッチングを活かして高周波で電力変換動作を行います。
 これらのパワーデバイスの優れた特性を生かした回路動作を評価するにはダイナミックレンジと周波数帯域の広い電圧・電流値を測定する必要があります。またこのような回路動作の測定では、被測定対象の回路が持つ対地静電容量などの寄生成分だけでなく、測定系の回路に含まれる寄生成分も測定結果に対して影響を与えます。このため寄生成分の影響に注意して測定結果を評価することが必要になります。
我々の研究室では測定対象の特性だけでなく、測定系の特性を合わせて評価しています。評価結果をもとに更に低損失で高機能な電力変換回路を開発し、カーボンニュートラル実現の一翼を担っていきます。

「光絶縁プローブ」のニーズや用途について教えてください。

 SiC MOSFETやGaN HEMTなどのパワーデバイスは、数百V以上のドレイン-ソース電圧に対して、そのオンオフを制御するゲート-ソース電圧は数~10数Vになっており、電圧レベルが大きく異なります。特にNチャネルパワーデバイスが直列接続されたハーフブリッジ回路構成において、直列接続された下側のパワーデバイスはソース端子の電位が負電位に固定されていますが、上側のパワーデバイスのソース端子の電位は下側のパワーデバイスの導通状態によって変化するフローティングと呼ばれる状態にあります。このため上側のパワーデバイスに印加されているドレイン-ソース、ゲート-ソース電圧を測定するにはフローティング状態に対応した差動電圧プローブを用いる必要があります。特に高速なスイッチング動作では、フローティングとなっている上側のパワーデバイスのソース端子の電位が大きな時間変化率で遷移します。この電位は上側パワーデバイスを測定する差動電圧プローブに対してコモンモードと呼ばれます。
従来の差動電圧プローブでは回路自体が持つ寄生成分によって、同相除去比(CMRR)と呼ばれるコモンモードの電圧がプローブの測定結果に与える影響を十分に抑制することができないという問題がありました。
 「光絶縁プローブ」では、検出部とデジタルオシロスコープなどの測定器とのインターフェース部が信号経路だけでなく電源部を含めて光ファイバーで絶縁されており、寄生成分による結合が無視できる程度に抑制されています。このため非常に大きなCMRRが得られます。従って測定系の寄生成分が測定結果に与える影響を気にすることなく上側パワーデバイスの電圧を測定し評価することができます。

Micsig社の光絶縁プローブをご使用になられた感想をお聞かせください。

 Micsigの光絶縁プローブは、他の光絶縁プローブと比較して低価格ではありますが、同等のゲイン特性が得られており高周波数成分が含まれるスイッチングの過渡波形を再現良く測定できるだけでなく、10MHz以上の周波数で高いCMRRが得られており、コストパフォーマンスが良い光絶縁プローブとして我々の研究室でも利用しています。

『ドリフトが少なく再キャリブレーションの必要が殆どない』
Micsig光絶縁プローブの優れた点を教えてください


 差動電圧プローブを用いる場合には0電圧レベルのドリフトに注意する必要があり、使用前にキャリブレーションを行いますが、通常は「光絶縁プローブ」も同様にドリフトの問題があります。
Micsigの「光絶縁プローブ」はドリフトが少ないため、電源をいれてしばらく置いた後にキャリブレーションを一度行えば、測定中に再キャリブレーションをする必要がほとんどないので助かっています。

 

『高精度な測定には適切な測定条件が必要』
パワーエレクトロニクス分野における素子や回路の評価のポイントは?

 現在のパワーエレクトロニクスでは電力変換効率が99%近いものがあり、0.1%の効率向上でしのぎを削っています。このような状況では素子や回路の開発だけでなく高精度の測定による評価が必要です。高精度な測定には、測定器の性能だけでなく適切な測定条件で正しく測定器を使わなければなりません。これからも我々の開発した素子や電力変換回路の性能を正しい測定で評価していきたと思います。

【Micsig】
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